西方沖から15年、東日本から9年が過ぎ(R2年3月現在)震災の記憶も薄れてきたのでは?でも「災害は忘れた頃にやってくる」とよく言いますよね。いつやって来てもいいように備えておくべきです!そこで、今回から数回にわたりリフォームで出来る耐震補強の実例をみていきましょう。
耐震補強実例(ほぞ抜け対策)
地震力は主に横方向からやってきます。その力に家中の壁が踏ん張ろうと抵抗し、その力が勝った場合は建物は倒壊しませんが、建物の端っこはご覧のように強い力で引き抜かれようとします(耐震補強で壁を強くした場合も同じ。壁の補強については次回以降で)。
耐震補強実例(ほぞ抜け対策)
その強い引き抜き力は出隅の角柱で4tを超えることもあり、ある程度壁の強度が確保されている建物の場合、箱としての家の形を保てても、ご覧のように土台から上部構造が引き抜けてしまうのです。阪神淡路震災でこのような事象が多発したため、国は旧建設省時代に告示1460号でその対策に乗りだしました。
耐震補強実例(ほぞ抜け対策)
先ほどの建物の全景です。土台から引き抜け(柱のホゾ抜け現象と業界では言います)、箱形状をある程度保ったまま倒れて(全壊)しまっていますね。もし土台から柱が引き抜けなかったらこの建物は多少の損壊(半壊)で済んだのかも?。そして最低限の補強さえしておけば持ちこたえたのでは?と思うと残念ですね。
耐震補強実例(ほぞ抜け対策)
先程の告知1460号の基準(計算によって判定)により、特に大きな引き抜けがかかる柱が判ります。先程のような倒壊を未然に防ぐためにも最低限この補強検討をお勧めします。建物形状にもよりますが概ね4~6本の設置(設置は1階のみ)ですみます。気になるコストは税別20~30万で済み、最邸限の耐震補強(注:後付けHD金物だけでは診断上評点は上がりません)となります。参考ですが平成12年6月以降の新築の建物には義務化されており、この金物は写真とは別形状にはなりますが、壁の内部に施されています。たとえ評点が1.0にならなくても、補強は必要です。その判断の為にも是非、耐震診断を受けましょう。
耐震補強実例(ほぞ抜け対策)
なお、ここで注意点ですが基礎に打ち込むアンカーは既存の基礎に鉄筋が入っている場合は有効ですが、入っていなければ写真のように鉄筋入り基礎の新設も同時に行わなければなりません。この場合基礎の造作工事が別途税別75,000円程度かかります。
耐震補強実例(ほぞ抜け対策)
大規模な改築工事(壁補強を伴う耐震補強や間仕切り改築等)を同時に行う場合は、この後付けホールダウン金物も壁の内部に設置することが出来ますので、意匠が気になる方にはお勧めです。なお、この建物は基礎に鉄筋が確認されたので、基礎の補強は必要なく直接アンカーボルト(M16ボルトをケミカル装填)を打ち込んでいます。
既存住宅には経年劣化による不具合がつきものです。でも、購入前のインスペクションで、状況がわからないという不安を解消することは可能ですよ!