【福岡発】見えない境界線!? 隣地との高低差には注意が必要です。

戸建てに住むなら境界を意識するべき

マンションに住んでいる場合、自分のテリトリーを侵される心配をすることはあまりないと思います。壁で囲まれた空間は自分たち家族のエリア。お隣さんがちょっとはみ出てる…なんてことは有り得ません。でも戸建て住宅の場合、隣家との境は目に見えない境界があるだけ。地面もつながってますし空間も共有している状態です。

 塀で囲まれた範囲が自分の土地かと思いきや、本当の境界線は塀のラインからずれていることもよくあります。特に注意が必要なのは、隣地との高低差がある敷地です。 

 

法面とは?

「法面(のりめん)」という言葉をご存知ですか?ウィキペディアによると、「切土や盛土により作られる人工的な斜面のこと。道路建設や宅地造成などに伴う、地山掘削、盛土などにより形成される。」という説明文があります。

斜面に造成された住宅地を想像してみてください。上がっていく道路に沿ってひな壇になった宅地に住宅がお行儀よく並んでいる様子をご覧になったことがあるかと思います。主要な道路から側道に入り、各家にアプローチするわけですが、両隣との段差は大したことがなくても、背後の家との段差は結構あったりします。

  

下の宅地を購入したらどうなる?

例えば、このような住宅地のワンブロック内にある、低い方の物件をあなたが購入したとしましょう。隣接する宅地との高低差を、間知ブロックや石積みで固めたものを、おしなべて「擁壁」というのですが、この擁壁がかなり厄介なのです。

そもそも隣接する敷地境界上にある擁壁は、誰の物なのでしょうか?ズバリ、上の宅地の所有物です。これがないと宅地を構成できないわけでして、境界線は、下の宅地内にあるということになります。「宅地内?擁壁の下端部分じゃないの?」と思われたかもしれませんが、地面を掘っていくと、擁壁の基礎部分がまだまだ下にあるのです。つまり、境界線は、地面と擁壁の下端が接しているラインではなく、それより更に宅地内に入り込んだラインとなります。

 

擁壁の安全性について

さて、ここで問題になるのが擁壁の構造的な耐力です。古い擁壁は、構造的に安全だと確認する術がない状態なのです。表面的な劣化は見て取れても、造成時の設計・工事がどうなっていたかは知る由もなく、しかも、現状から耐力を計り知ることもできないのです。せめて表面的劣化だけでも補修してほしいと思っても、隣家の生活空間からは見えない部分であり、真剣に取り合ってくれるかは疑問です。地震などで擁壁が崩れた場合、上の宅地に住む人も、下の宅地に住む人も、甚大な被害に見舞われることが予測されますが、所有権が上の宅地にある以上、折半してどうにかするのも変ですし、例えそれができたとしても、現行基準に則ってまともな構造体にするためにはかなりの費用が必要ですから、なかなか実現するのは難しいと思われます。目の前にある劣化した擁壁が崩れてこないか、毎日憂鬱な気分で眺めながらも成すすべもない…せっかく夢のマイホームを手に入れたのに、心配は尽きないということになりそうです。

 

地続きでも越境している現実

低い方の土地においては、目の前に立ちふさがる擁壁が鬱陶しい存在ではあるものの、斜めに積み上げられた擁壁の上部は、自分たちの空間として広がっているような状態です。地面をみれば擁壁の下端まで庭は地続きです。よくある越境の例としては、この擁壁ギリギリに倉庫を設置するというようなものがあります。これは間違いなく越境しています。敷地境界線は、擁壁の下端のラインではなく、それよりも更に入ったところにあるのですから。

 

越境部分の取り扱い

上の宅地の人からすれば、この越境自体を認識していないかもしれません。認識していたとしても、特に自分の生活に影響が及ぶわけでもありませんし、近所付き合いもありますから、即刻目くじら立てて責められるということは考えにくいです。ただ、このお隣さん、つまり上の宅地が売却された場合はどうなるでしょうか?売却するとなると、それに係わる仲介会社もその土地と建物について正しく情報開示する義務がありますから、相隣関係についても調査を行います。そして、下の宅地の工作物等が越境していることが判明すると、新たな買主との間に覚書を交わす準備を整える必要が出てくるのです。 

倉庫など単独のものであれば、撤去や移動を要求されることもあるかもしれませんが、増築して屋根部分が越境している場合などは、次のリフォームの際に越境状態を解消するという約束を交わすこともあります。ただ、新たに購入した買主が、その土地で取り壊し新築をする場合、話は別です。撤去や移動どころでは済みません。敷地境界ギリギリまで新しい擁壁を垂直に新設する可能性だってあるのです。地面だけではなく空間もとられ…いえいえ越境していたのは自分の方ですから文句は言えません。

 

安い理由がここにあるのかも??

いずれにしても、今まで平穏無事に生活していたところに、降ってわいたように違法行為呼ばわりされるのですから、心中穏やかではいられないかもしれません。低い土地にある物件を購入した際に知らされていたのならまだしも、全く知らない状態で突然そんなことを言われたらどんな気持ちがするでしょうか?

このような物件は売れ残りがちで、値引きが行われることもありますが、それ以上の心配事が付いて回る可能性も秘めていることを忘れないでください。 

 

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(「家を買う方法、間違ってないですか?」を読んでみる。)